命めぐらす海山川
屋久島で見た いきものがたり

こども隊員10人が問いかける!

 沖縄こども環境調査隊2016のシンポジウム「地球の声を伝えよう~海の生き物と環境保全」が3日、那覇市のタイムスホールで開かれました。

 県内の小中学生10人で7月に結成された調査隊は沖縄本島で事前学習を重ね、7月26~30日にかけて鹿児島県の屋久島を視察しました。

 シンポジウムでは調査で学んだことを堂々と発表し「私たちは海のように皆の気持ちをつなげ、自然と人間の共存を目指します」と力強く宣言しました。

 主催は沖縄タイムス社、共催は沖縄美ら島財団。協賛は沖縄海邦銀行、環境ソリューション、沖縄コカ・コーラボトリング、我那覇畜産。(順不同)


「わたしたちと一緒に環境について考えてみませんか!」
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(写図説明)高さ18メートル、周囲8.3メートルの「七本杉」のスケールに圧倒される隊員
=7月28日、屋久島町の白谷雲水峡

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〈司会〉砂川英依さん

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(写図説明)樹齢1800年以上と言われる「仏陀杉」に元気をもらう隊員たち
=7月29日、屋久島町のヤクスギランド

基調講演

屋比久壮実さん
アクアコーラル企画代表
森のミネラル 湧き出る島

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 屋久島は小さな島ですが、九州一高い1935メートルの宮ノ浦岳があります。太平洋から来る湿った空気がこの山を登るときに、温度が下がって雲になるため、ほぼ毎日雨が降ります。

山頂の降水量は年間8千~1万ミリメートルあるとされています。海の中にはサンゴ礁が広がり、山に登ると針葉樹があります。沖縄の亜熱帯から北海道の亜寒帯までの気候が凝縮しているのが大きな特徴です。

 隣の種子島は平野が広く畑作ができることから「つくる島」、対照的に平野がない屋久島は材木や山菜など山の恵みに頼る「採る島」と呼ばれてきました。

 有名な「屋久杉」は樹齢千年以上のものをいいます。なぜこのような巨大な木が同じ場所で何千年も共存してこれたのでしょうか。例えば野菜だと周りの土の栄養分を吸い尽くし一年で枯れてしまいます。屋久杉は栄養失調にならないのでしょうか。

 アメリカの植物学者ウイルソン博士が発見したウイルソン株と呼ばれる切り株があります。周囲を歩くと十数メートルあり、畳十畳ほどの空洞があります。そこで2、3時間ゆっくりしたことがあるのですが、空洞の真ん中で泉が湧いていることに気付きました。屋久杉には森のミネラルを溶かした水が常に供給されていたのです。だから、何千年も同じ場所で巨大な木を生かし続けることができるのだという結論に達しました。

 屋久島は沖縄と違って森と海が近いです。木の葉が川に落ちると分解されて無機物になり、川に溶けて海に運ばれる。それが周辺の海の豊かさを育んでいます。小魚が圧倒的に多くなるので豊かな食物連鎖が海の中でも広がっています。
 これからも屋久島の生き物のすこやかな生活を願っています。

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(写図説明)こども調査隊の発表に多くの来場者が耳を傾けました


屋久島と沖縄の自然の違いと共通点

上原蓬(大宜味小5年)

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 現地の人と吉田集落に行った時、砂が沖縄と違うことに気づきました。ウミガメが産卵に来る永田浜に行ってみると、吉田集落の砂とも違うし、沖縄の砂とも違いました。いろいろ調べてみると、それぞれの島の成り立ちに関係していることが分かりました。

 屋久島は1500万年前に海の中にあるマグマが固まってできました。この時、粘りけの強いマグマが冷えて固まってできた岩石が花こう岩です。花こう岩が、雨風や波などによって削られて、細かくなったのが屋久島の砂です。それに対して沖縄の砂は、サンゴや有孔虫などが作り出した石灰岩などが雨風や波によって削られて、細かくなったものです。

 屋久島と沖縄はともに黒潮が近くを流れていることが関係し、海の生き物に共通点が多くありました。例えば、ゴマサバと言う魚です。ゴマサバを屋久島ではサバ節にして特産品としています。しかし、近年温暖化の影響により、出産時期や脂がのる時期がずれてきているようです。それは、本来の出産時期や脂がのる時期のサバを食べる生物の数が減ることにつながると思います。その結果、食物連鎖が崩れていきます。

そこだけの環境 貴重

知花峻輝(宜野湾中2年)

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 沖縄も同じような問題を抱えています。最近、石垣島や恩納村でサンゴの大規模な白化が見つかりました。サンゴを隠れ家とする生物がたくさん食べられ数が減っていくので、それを好物としている生物の数も減っていきます。

 調査を通して、自然の違いと共通点には島の成り立ち、海流、気候が関係していることが分かりました。そこに生える植物、生息する動物も違ってきたり、共通したりすることがわかりました。

 屋久島と沖縄はどちらの島もそこだけの環境があり、そこだけにしかない動植物が生息します。それは貴重なことです。地球全体の自然環境を守るために、できることから実行したいと思います。

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(写図説明)サバ節工場で作業工程について学びました=7月27日、屋久島町の馬場水産


山と海と川のつながり

ウィンフィールド・ハリー・ウィリアム・フィフス(沖縄カトリック小5年)

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 屋久島でとても驚いたのは、海と山がとても近いということです。屋久島は一カ月に35日も雨が降ると言われるほどだそうですが、島が花こう岩でできているため土が少なく、雨が降っても水をあまり吸収することができません。では、どうやって植物は生きているのでしょうか。

 それはコケです。コケは、花こう岩の上に生えることができます。土のように多くの栄養を含んでいるわけではありませんが、水分を吸収し保つことで、植物を育てることができるのです。

 川を調査して、花こう岩の大切さを知ることができました。屋久島の川の水がにごっていない理由は、山にある花こう岩の粒が粗く、水と混ざることがないからです。海から来た水がきれいなまま海へ戻るという「きれいな水の循環」を見ることができました。

“きれいな水”の循環

親泊千明(平良中2年)

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 私たちが住む沖縄はどうでしょうか。国頭村の奥間川などのような清流もありますが、本島では赤土や生活用水などで汚れてしまった川も多くあります。川が汚れているので、海まで汚れてしまっています。宮古島の地下水汚染は、必要以上に使った化学肥料が雨の水と一緒に地下に浸透しているのが原因です。

 山でヤクザルを見ました。ヤクザルは、木の実や植物を食べるそうですが、ヤクザルが食べる植物は雨のおかげで成長しています。その雨の水は、海から来ています。山に住んでいる生き物は、海と関係ないと考えていたので驚きました。海と山のつながりは、水の循環だけではなく、生き物も育んでいたのです。

 自然はつながっていて、そのつながりを生き物も利用しています。だから、自然を壊してしまったら、その環境で生きている生き物が絶滅してしまう可能性があります。ずっと自然のつながりを残していきたいです。

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(写図説明)シュノーケリングを通して山と海の近さに驚きました=7月27日、屋久島町の一湊海水浴場


人間はウミガメをどうサポートするべきか

西原和夏(真和志小6年)

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 私たちは、屋久島の永田浜でウミガメの産卵を見ました。産卵中の母ガメは、荒い息をしていて、とても必死さが伝わり、見ている私たちには人と重なって見えました。卵は2、3個ずつ粘液と一緒に落ちてきました。ピンポン玉くらいの大きさで白かったです。

 私たちの行動によって、ウミガメが困ってしまうことがいくつかあります。その一例が海や川にある消波ブロックです。消波ブロックは、私たちにとっては、危険から身を守るために必要なものですが、消波ブロックに挟まって抜けなくなり、死んでしまうウミガメもいます。

 ウミガメは海で生活をしていますが、人と同じように肺で呼吸を行います。なので、もしごみに絡まってしまった場合、水面に上がることができず、苦しい思いをしながら死んでしまいます。こんな死に方をするなんてかわいそうだと思いました。

ウミガメから学んだ

稲福優衣(港川中1年)

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 ふ化した子ガメは、約1週間かけて地上にはい上がってきます。これを人に例えると、砂の下20~30メートルから1週間かけて地上にはいあがるようなものです。

 このことを知り、砂に何度も足を取られながら、地上へ出ようとする子ガメたちはすごいと思いました。けれど、その時にもし人間が卵のある砂の上を歩いてしまうと、砂が固まり子ガメがはいあがることができず、死んでしまいます。

 私たちは、ウミガメについて学び、実際に産卵を見ることでウミガメにできることは何だろうと考えました。卵を移設することや子ガメの放流は誰にでもできることではないですが、ごみを拾い、ごみを捨てないようにすることは誰にでもできることではないでしょうか。

 直接ウミガメに触れなくても私たちがサポートできることはたくさんあります。沖縄から世界へウミガメを守る取り組みを発信していきたいです。


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(写図説明)ウミガメについて説明を受ける隊員ら=7月27日、屋久島うみがめ館


人が増えたことで起きる環境問題

加蘭太一(開邦中1年)

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 私たちの視察した屋久島は、とても自然が豊かな島で、観光客も多く、沖縄と似ていました。しかし、人が増えたことで問題が起きています。その一つが、ヤクザルなど野生動物の人慣れです。

 ヤクザルは農作物を食い荒らすこともあるそうです。ほかにも、観光客にえさをねだるということも起きています。サルがえさをねだることを悪い事だと思わない人もいるかもしれません。しかし、人間の食べ物を食べることで、味を覚え、より人里に降りやすくなり、農作物の害につながるのです。

 人間が増え生態系を壊したことで、ヤクジカも急増しています。希少植物を食べてしまうヤクジカの急増は「食害」という形で自然に悪影響をもたらします。生態系が崩れてしまった場合、数の調整のために駆除をしていますが、駆除はいい面も悪い面もあって難しい問題だと感じました。

まず知る そして守る

新垣鈴菜(上山中3年)

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 水もまた、人間がいることで影響を受けています。水のきれいな屋久島ですが、上流に家があると下流にも生活排水が混じり、飲めなくなってしまうそうです。だから、水が飲めるかを見分けるときには、上流に家があるのか確認するといいと教えられました。屋久島の美しい川もその一部は、人間が生活排水で汚しているのです。

 沖縄も屋久島も素晴らしい自然を持っています。身近にある自然を知り、自分たちで守っていく必要があります。では、これ以上自然を壊すことがないように、自然に触れる事や生き物に干渉することを規制してしまうべきでしょうか。違うと思います。

 自然は複雑な関係の元に成り立っています。だからこそ、今ある自然を壊さないようにする事が大切です。自然に触れることができないような規制では足りないと思います。自分たちの環境を知り、それを守るための努力が必要だと思いました。

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(写図説明)屋久島の森を流れる清流から自然の豊かさを学ぶ隊員=7月29日、屋久島町のヤクスギランド


「共存」~環境問題との向き合い方~

栗山詩帆(神森中1年)

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 屋久島に上陸して一番先に目についたのは港に置かれたたくさんの冷蔵庫でした。それをきっかけに屋久島の環境と人間のかかわり方について調べてみたいと思いました。

 ウミガメの産卵を観察した屋久島の永田浜は、まるで掃除されているように人工物が一切落ちていなくて、とても感動しました。一方で、シュノーケリング体験をした一湊海水浴場やトンボレという吉田集落伝統の岩風呂を体験した時には、食品の袋やペットボトル、ハングル文字・漢字などが書かれた釣り具のウキ、スプレー缶などの人工物が漂着していました。

 海に捨てられた人工物によって、海に暮らす生き物たちが被害にあっています。絶滅危惧種に指定されているウミガメがその例です。網に絡まってケガをしたり、死んでしまったりしていると聞き心を痛めました。

地球の声に耳すませ

瀬底蘭(北中城中1年)

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 海を漂流する人工物は紫外線によって劣化し細かくなります。その細かくなったものをプランクトンが食べて、そのプランクトンを魚が食べます。その魚を食べる私たちの体内に結果として有害な物質が入り込んでしまう可能性があるのです。身勝手に捨てたものにより生き物や自然、そして最終的にこうして私たち「人」に返ってくることを忘れてはいけません。

 環境を守るために私たちが出来ることは何でしょうか。それは、地球の声に耳をすませなければならないという事です。普通にやっている事でも一歩立ち止まって考えてみる。今の行動は地球にどんな影響を与えるのか。これからのことを考えた時、この行動はふさわしいのか。その事こそ環境問題解決への初めの一歩だと思います。

 人間が生きていられるのは、自然のおかげです。みなさんも身近に出来る事から始めてみませんか。私たち10人と一緒に、本当の自然と人間の共存を目指して!


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(写図説明)海岸への漂着物をみんなで力を合わせて引き上げました=7月27日、屋久島町の永田浜


OB・OGから熱いエール!

 2009年から始まった「こども環境調査隊」のOB・OG6人によるパネルディスカッションが初めて開かれました。6人は当時の思い出や経験を振り返り、後輩に熱いメッセージを贈りました。

 参加したのは2010年にバリ島を調査した富永麻鈴さんと﨑枝晏梨さん、11年マレーシアの知名紗也加さんと比嘉修斗さん、13年奄美大島の比嘉咲さん、真栄田あかりさん。

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(写図説明)こども環境調査隊のOB・OGとしてパネルディスカッションに参加した
(右から)比嘉修斗さん、﨑枝晏梨さん、富永麻鈴さん

生き物の立場に立ち 仲間との縁大切に ともに発信続けよう


 調査隊で印象に残ったことについて富永さんは「バリ島の下水処理で沖縄で開発された環境技術が役立っていることがうれしかったです」と振り返りました。

 マレーシアの森林伐採を視察した知名さんは「地元の方が自然の貴重さに気付いていないことが衝撃で、わたしたちが発信していかなければと感じました」と話しました。

 調査隊での経験がその後の生活に与えている影響について、比嘉修斗さんは「自然や生き物に興味がわき、環境問題について深く考えるようになりました」、真栄田さんは「漂流物をウミガメが食べてしまうのではないか、など生き物の立場に立って環境を考えるようになりました」などと振り返りました。

 後輩へのメッセージとして、﨑枝さんは「調査隊で感じた、学んだことを忘れず、メンバーとの縁を大切にしてほしい」と要望。比嘉咲さんは「今日の発表で終わりでなく、わたしたちとともに発信を続けていきましょう」と呼び掛けました。 

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(右から)真栄田あかりさん、比嘉咲さん、知名紗也加さん