2017年08月20日(日) ワラビー
自然と共存考える
奄美っ子と合同視察


 県内(けんない)の小中学生(しょうちゅうがくせい)が環境問題(かんきょうもんだい)について学(まな)ぶ「沖縄(おきなわ)こども環境調査隊(かんきょうちょうさたい)2017」(主催(しゅさい)・沖縄(おきなわ)タイムス社(しゃ)、共催(きょうさい)・沖縄美(おきなわちゅ)ら島財団(しまざいだん))が7月(がつ)25日(にち)から4日間(よっかかん)、慶良間諸島(けらましょとう)を視察(しさつ)しました。

 「慶良間(けらま)ブルー」と呼(よ)ばれる美(うつく)しい海(うみ)で、8人(にん)の隊員(たいいん)たちは自然(しぜん)と人間(にんげん)の共存(きょうぞん)について考(かんが)えました。

PICKH20170820_W0001000103G00006 - コピー.jpg

 今回(こんかい)は「奄美(あまみ)こども環境調査隊(かんきょうちょうさたい)」と、県内(けんない)では初(はじ)めての合同調査(ごうどうちょうさ)です。

 慶良間諸島(けらましょとう)は豊(ゆた)かな自然(しぜん)を守(まも)り残(のこ)していくため、14年(ねん)に国立公園(こくりつこうえん)に指定(してい)されました。

 16年(ねん)に指定(してい)された「やんばる」や今年(ことし)3月(がつ)に指定(してい)された「奄美群島(あまみぐんとう)」にとっては「先輩(せんぱい)」です。

 隊員(たいいん)は自然(しぜん)と人間(にんげん)の関(かか)わりについて調査(ちょうさ)します。

 最初(さいしょ)に到着(とうちゃく)したのは那覇市(なはし)の西約(にしやく)40キロにある座間味島(ざまみじま)。

 まず環境省(かんきょうしょう)の自然保護官(しぜんほごかん)の案内(あんない)で生(い)き物(もの)を観察(かんさつ)しました。

 島(しま)では貨物(かもつ)などに紛(まぎ)れて入(はい)り込(こ)んだ外来種(がいらいしゅ)のトカゲやカエルが、もともといる生(い)き物(もの)に迷惑(めいわく)をかけているといいます。

 駆除(くじょ)するための仕掛(しか)けを見学(けんがく)した一行(いっこう)からは「人間(にんげん)のせいで島(しま)に来(き)たのに駆除(くじょ)されるのはちょっと悲(かな)しい」という声(こえ)がもれました。

 翌日(よくじつ)は座間味島(ざまみじま)の南西約(なんせいやく)3キロにある阿嘉島(あかじま)でケラマジカについて専門家(せんもんか)から話(はなし)を聞(き)きました。

 ケラマジカは350年(ねん)ほど前(まえ)に今(いま)の鹿児島県(かごしまけん)から持(も)ち込(こ)まれたと考(かんが)えられており、もともと外来種(がいらいしゅ)でしたが現在(げんざい)では国(くに)の天然記念物(てんねんきねんぶつ)として保護(ほご)されています。

 隊員(たいいん)らが町(まち)を歩(ある)いてみると、間(ま)もなく木陰(こかげ)で休(やす)んでいるシカを見(み)つけました。「こんな町(まち)の中(なか)にシカがいるなんて」。隊員(たいいん)たちは目(め)を丸(まる)くしています。

 またシカが畑(はたけ)を荒(あ)らしたり人(ひと)に迷惑(めいわく)をかけたりしていることも聞(き)き、複雑(ふくざつ)な表情(ひょうじょう)になりました。

 3日目(みっかめ)は渡嘉敷島(とかしきじま)でシュノーケリングしてサンゴの生態(せいたい)を観察(かんさつ)しました。

PICKH20170820_W0001000103G00005.jpg(写図説明)シュノーケリングの合間、調査隊の旗を広げてアピール=7月27日、渡嘉敷島

 海(うみ)に入(はい)った隊員(たいいん)たちはその透明度(とうめいど)に息(いき)をのみました。

 サンゴと色(いろ)とりどりの魚(さかな)の姿(すがた)が目(め)に飛(と)び込(こ)んできます。

 1日(にち)かけて観察(かんさつ)していくと、サンゴ減少(げんしょう)の要因(よういん)には天敵(てんてき)の生物(せいぶつ)だけでなく、人間(にんげん)による破壊(はかい)もあるということもわかってきました。

 それは悪意(あくい)ではなく不注意(ふちゅうい)によるものもあります。生(い)き物(もの)を守(まも)るよう知(し)らせることが重要(じゅうよう)だと考(かんが)えました。

 最終日(さいしゅうび)には渡嘉敷(とかしき)の陸地(りくち)を調査(ちょうさ)しました。ガイドの説明(せつめい)を聞(き)きながら植物(しょくぶつ)や周囲(しゅうい)の景色(けしき)を注意深(ちゅういぶか)く観察(かんさつ)していきます。

 不規則(ふきそく)に枝(えだ)を伸(の)ばしているように見(み)える木(き)も、風(かぜ)の強(つよ)い場所(ばしょ)では枝(えだ)が同(おな)じ方向(ほうこう)に伸(の)びていました。

 砂浜(すなはま)では星砂(ほしずな)が有孔虫(ゆうこうちゅう)という生物(せいぶつ)の死骸(しがい)がもとになっていることを知(し)りました。

 地域(ちいき)の環境(かんきょう)と動植物(どうしょくぶつ)の生態(せいたい)は深(ふか)く関(かか)わっているのです。

 隊員(たいいん)たちは4日間(よっかかん)の旅(たび)で自然(しぜん)と共存(きょうぞん)する難(むずか)しさを実感(じっかん)しました。

PICKH20170820_W0001000103G00004.jpg

(写図説明)バルーンを使ってクジラについても勉強しました=7月26日、座間味港フェリー待合所


 まずは自然環境(しぜんかんきょう)としっかり向(む)き合(あ)うことが大切(たいせつ)だと身(み)をもって感(かん)じたようです。

 渡嘉敷島(とかしきじま)を離(はな)れる船(ふね)ではお世話(せわ)になった人(ひと)たちに向(む)けて、奄美(あまみ)の隊員(たいいん)と声(こえ)を合(あ)わせて「ニフェーデービル!(沖縄(おきなわ)の言葉(ことば)で「ありがとう」)」とあいさつしていました。

慶良間の自然 調べる守る

海と山めぐり生き物観察

 「沖縄(おきなわ)こども環境調査隊(かんきょうちょうさたい)2017」の隊員8人は、7月25日から28日まで「人と自然の関わり」をテーマに慶良間諸島(けらましょとう)で調査(ちょうさ)をしました。

 海や山の生物を観察し、島の環境(かんきょう)を保護(ほご)することの大切さを感じた一方、さまざまな要因(よういん)で破壊(はかい)されるサンゴ礁(しょう)や、人間によって持ち込(こ)まれた外来種生物の問題も目の当たりにしました。

 隊員は何を学び、何を感じたのでしょうか。活動の様子を写真で振(ふ)り返りつつ、体験記を紹介(しょうかい)します。

「いいね!」ポーズで旅を締めくくる隊員ら=7月28日、渡嘉敷島・阿波連岬.jpg

(写図説明)「いいね!」ポーズで旅を締めくくる隊員ら=7月28日、渡嘉敷島・阿波連岬


奄美から6人参加

 「沖縄(おきなわ)こども環境調査隊」と一緒(いっしょ)に奄美(あまみ)メンバー6人も活動しました(学校はすべて奄美市立)。

緒方寧音(おがたねね)さん(東城(とうじょう)小5年)
高味飛明(たかみとあ)君(小宿(こしゅく)小5年)
麓宙弥(ふもとひろや)君(伊津部(いつぶ)小5年)
岡﨑杏(おかざきあん)さん(名瀬(なぜ)小6年)
中津川結大君(なかつがわゆうだい)(奄美小6年)
上野凛(うえのりん)さん(朝日(あさひ)中1年)

PICKH20170928_A0016000102S00023.jpg
(写図説明)シュノーケリングでサンゴや海の生物を調査する隊員
=7月27日、渡嘉敷島(ウェブキャスト・エコ提供、小型無人機から)

調査日程

■7月25日(1日目)
ウミガメの卵観察

 座間味(ざまみ)港フェリー待合所で座間味島の歴史を学ぶ。

 座間味小6年の児童6人と合流後、環境(かんきょう)省慶良間(けらま)自然保護(ほご)官事務所(じむしょ)では外来種の現状(げんじょう)について説明を受け、古座間味(ふるざまみ)ビーチ近くで駆除(くじょ)用の仕掛(しか)けを視察。唐馬(とうま)ビーチ周辺ではウミガメの卵(たまご)を観察した。

■7月26日(2日目)
サンゴの生態学ぶ

 阿嘉島(あかじま)の集落を散策(さんさく)しケラマジカやシカ対策について実地調査。離島振興総合(りとうしんこうそうごう)センターでサンゴの生態(せいたい)を学ぶ。

 午後は阿嘉港周辺でシュノーケリングしサンゴを調査。座間味島に戻(もど)り座間味港フェリー待合所でクジラの生態(せいたい)を学習。

■7月27日(3日目)
海に入り終日調査

 渡嘉敷島(とかしきじま)へ渡(わた)り、渡嘉志久(とかしく)ビーチの周辺で終日シュノーケリング、サンゴを調査。夕方、沖縄(おきなわ)青少年交流の家でミーティング後、星座(せいざ)観察会。

■7月28日(4日目)
地形や植物を知る

 阿波連岬(あはれんみさき)を起点に山と砂浜(すなはま)をトレッキング。現地(げんち)の地形や植物の特徴(とくちょう)、星砂のでき方を学ぶ。

 午後の船で那覇(なは)市の泊港(とまりとまりん)へ戻る。とまりん研修室(けんしゅうしつ)でミーティング、調査活動をまとめると同時に、シンポジウムに向けた準備(じゅんび)を開始。

PICKH20170820_W0004000103J00011.jpg

学んだこと伝えたい

備瀬哲平さん(安慶田中2年)

PICKH20170820_W0004000103J00001.jpg サンゴが海で遊ぶ人たちによって折られていたこと、外来種トカゲがトラップにかかっていたことが印象に残っています。

 サンゴは海の中で重要な仕事をしているのに人に傷(きず)つけられているのは心苦しかったです。外来種は、人が持ち込(こ)んだせいで、失わずにすんだ命を失っているということも学びました。

 これからはサンゴを傷つけない、生き物たちのために「外来種を入れない、捨(す)てない、広げない」を自分も注意し、また学んだことや体験したことを周りの人たちにも理解(りかい)してもらえるよう広げていきたいです。

PICKH20170820_W0004000103J00013 (1).jpg
(写図説明)シュノーケリングをしながらサンゴの写真を撮ります=7月27日、渡嘉敷島(沖縄美ら島財団提供)

人が招いた現状発信

仲座空音さん(琉大付属中2年)

PICKH20170820_W0004000103J00002.jpg
 今回、外来種についての印象が一番強く残りました。古座間味(ふるざまみ)ビーチ近くでトラップにグリーンアノールという外来種トカゲがかかっていて、環境(かんきょう)省のレンジャーさんが「ここではやっかい者扱(あつか)いだけど、元々いた場所じゃもうすぐ保護(ほご)対象なんだよ」とお話しなさっていました。

 そもそも人間のせいで持ち込(こ)まれたのに駆除(くじょ)されるということに、とても悲しくなりました。

 人間が招(まね)いたこの状況(じょうきょう)を、もっとたくさんの方に知ってもらえるように、私(わたし)たちから沖縄(おきなわ)、そして世界へと発信していきたいです。

PICKH20170820_W0004000103J00019 (1).jpg
(写図説明)粘着式の仕掛けに捕らえられたグリーンアノール=7月25日、座間味島

奄美との違い比べた

名嘉山桂さん(安岡中1年)

PICKH20170820_W0004000103J00003.jpg
 私(わたし)は、3回目の応募(おうぼ)で環境(かんきょう)調査隊(ちょうさたい)になれました。最初は知らない人とうまくやっていけるか不安だったけど、みんなおもしろい人たちばかりですぐに仲良くなれました。

 また今回、奄美(あまみ)の調査隊とも一緒(いっしょ)に行動しました。沖縄(おきなわ)と奄美の違(ちが)いを比(くら)べることもできたし、とても楽しかったです。

 慶良間諸島(けらましょとう)では、ふつうに旅行で行っていたらわからない、地元の人たちからの深い話が聞けました。意見を交換(こうかん)しながら活動できたので、良い経験(けいけん)ができたと思います。お世話になった方々、ありがとうございます。

PICKH20170820_W0004000103J00010 (1).jpg
(写図説明)ガイドの池松來さん(左)から渡嘉敷島の地形や植物について
説明を受ける隊員=7月28日、阿波連岬付近

島が抱える問題知る

奥平柊さん(球陽中1年)

PICKH20170820_W0004000103J00004.jpg
 今回は主に島がかかえている問題について学びました。ケラマジカやクジラの話などを通して人間と動物の関わりを知ることができました。

 一番印象深かったのはシュノーケリングです。サンゴを餌(えさ)とする貝や折られたサンゴを見て、サンゴが死ぬのは白化現象(げんしょう)だけではないことがわかりました。

 サンゴを増(ふ)やすために植えるのが一番ですが、私(わたし)たちにもできることはみんなに「伝える」ことだと思います。

 今回わかったことを知ってもらえるよう、自分の経験(けいけん)を生かしたいと思います。

PICKH20170820_W0004000103J00017 (1).jpg
(写図説明)宮里俊輔さん(右)のウミガメ調査に同行した隊員=7月25日、座間味島・マチャンイノーの浜

共存の方法考えたい

福永梢子さん(米須小6年)

PICKH20170820_W0004000103J00005.jpg
 この4日間で心に残っているのはケラマジカです。見られないかもと思っていたけど、見ることができて良かったです。阿嘉島(あかじま)ではシカが集落に入ってこないように側溝(そっこう)などが設置(せっち)されていました。

 人と自然はいつも深く関わり合っています。そこでメンバーで「共存(きょうぞん)」とは何かを話し合い、「平等」という答えが出ました。

 人間は自然に何もしていなくて、共存できてないんじゃないかということになりました。共存できるように、もっといろいろ考えたり伝えたりしていきたいです。

PICKH20170820_W0004000103J00014 (1).jpg
(写図説明)阿嘉港近くの木陰まで出てきたケラマジカ=7月26日

できること 少しずつ

佐野一斗君(当山小6年)

PICKH20170820_W0004000103J00006.jpg
 慶良間諸島(けらましょとう)で一番びっくりしたのは、外来種問題、サンゴなどの減少(げんしょう)、在来種(ざいらいしゅ)の絶滅(ぜつめつ)などいろいろな問題のほとんど全てに人間が関わっていて、どんどん環境(かんきょう)が悪くなっているということでした。

 ぼくはなぜここまで人間は周りの自然のことを考えずに生きてきたのだろうと思いました。
 これまでこわしてきた自然を完璧(かんぺき)に直すことはできないかもしれなくても、少しずつ、自然のためになることをやっていけたらいいと思います。

 こんなことを考えるほど、今、自然は大変なんだとも思いました。

PICKH20170820_W0004000103J00016 (1).jpg
(写図説明)真剣な表情で星砂を観察する隊員=7月28日、渡嘉敷島

外来種対策で大議論

赤嶺貴一郎君(城北小6年)

PICKH20170820_W0004000103J00007.jpg
 まず印象に残ったことは初日のミーティングです。外来種を増(ふ)やさないためにできることを巡(めぐ)って、意見が二つに分かれて大議論(だいぎろん)になったのです。

 次に僕(ぼく)が住んでいる沖縄(おきなわ)本島との違(ちが)いを学びました。同じ沖縄だから住んでいる生き物も変わらないのかと思っていたけれど「ケラマジカ」「ウミガメ」など身近にはあまりいない生き物がいました。

 最後に、これからどうするかです。「外来種は入れない、捨(す)てない、広げない」を実行します。また温暖化(おんだんか)を防(ふせ)ぐため省エネも取り組んでいきたいです。

PICKH20170820_W0004000103J00015 (1).jpg
(写図説明)公園の花壇にはシカに食べられないようフェンスがありました=7月26日、阿嘉島

サンゴの破壊を目撃

國井雅姫さん(今帰仁小5年)

PICKH20170820_W0004000103J00008.jpg
 慶良間諸島(けらましょとう)では歴史と自然、生き物のことを学びました。
 一番心に残っているのは、シュノーケリングの最中、観光客たちがフィンでサンゴをけったり、サンゴ礁(しょう)にのったりしていたことです。

私(わたし)は事前に注意事項(じこう)を聞いていたのですが、観光客の人たちは聞かされていないのかなと思いました。楽しそうに話をしていたので、気づいていなかったのかもしれません。でもサンゴを破壊(はかい)しているのにかわりはありません。

 やんばるに住んでいるとわからないことを知れたので、慶良間諸島に行って良かったと思っています。

PICKH20170820_W0004000103J00018 (1).jpg
(写図説明)元座間味区長の宮里芳和さん(右)から島の歴史を学ぶ隊員
=7月25日、座間味島・フェリー待合所

来月2日に成果発表

タイムスホールでシンポ

 沖縄(おきなわ)こども環境調査隊(かんきょうちょうさたい)の隊員が、沖縄本島や慶良間諸島視察(けらましょとうしさつ)で学んだ成果を発表する「沖縄こども環境調査隊2017シンポジウム」が、9月2日午後2時から那覇(なは)市久茂地(くもじ)のタイムスホールであります。入場無料。

 座間味村(ざまみそん)観光協会事務局長の谷口洋基(たにぐちひろき)さんによる基調講演(きちょうこうえん)があるほか、沖縄こども環境調査隊員8人と奄美(あまみ)こども環境調査隊員6人が五つのテーマに分かれて成果を報告(ほうこく)します。みなさんも隊員たちと一緒(いっしょ)に、環境のことを考えてみませんか。