命きらめく慶良間ブルー
沖縄こども環境調査隊2017
美ら島に迫る危機を徹底取材!
沖縄こども環境調査隊2017のシンポジウム「地球の声を伝えよう~人と自然の関わり」が2日、那覇市のタイムスホールで開かれました。
県内の小中学生8人で結成された調査隊は沖縄本島で事前学習を重ね、7月25日から4日間、慶良間諸島を調査しました。
シンポジウムでは調査で学んだことを堂々と発表し「環境問題を身近なこととして考え、責任をもって行動します」と力強く宣言しました。
島で研究を続ける専門家の講演もありました。今年は奄美こども環境調査隊と合同で実施。
主催は沖縄タイムス社、共催は一般財団法人沖縄美ら島財団。協賛は沖縄海邦銀行、環境ソリューション、沖縄コカ・コーラボトリング、沖縄県自動車整備振興会。(順不同)
【奄美こども環境調査隊】(写真後列右から)岡﨑杏(名瀬小6年)、上野凛(朝日中1年)緒方寧音(東城小5年)
麓宙弥(伊津部小5年)高味飛明(小宿小5年)、中津川結大(奄美小6年)
(写図説明)【沖縄こども環境調査隊】(写真前列右から)奥平柊(球陽中1年)、赤嶺貴一郎(城北小6年)
佐野一斗(当山小6年)、仲座空音(琉大附属中2年)福永梢子(米須小6年)
備瀬哲平(安慶田中2年)名嘉山桂(安岡中1年)、國井雅姫(今帰仁小5年)
沖縄と奄美の文化の共通点などについて元気よく発表した
奄美こども環境調査隊(南海日日新聞社提供)
【奄美こども環境調査隊】(写真後列右から)岡﨑杏(名瀬小6年)、上野凛(朝日中1年)
緒方寧音(東城小5年)、麓宙弥(伊津部小5年)高味飛明(小宿小5年)、中津川結大(奄美小6年)
基調講演
座間味村観光協会事務局長
谷口洋基さん
守る“海の熱帯雨林”
渡嘉敷、座間味、阿嘉、慶留間など大小30余りの島で構成される慶良間諸島について紹介します。慶良間海域は世界でも有数の透明度を誇り、美しいサンゴが生きるとてもきれいな場所です。冬になるとザトウクジラが出産・子育てのためにやってきます。
2014年3月5日サンゴの日に、慶良間諸島国立公園として、国内31番目の国立公園に指定されました。海が中心の国立公園といっていいでしょう。ちなみに最も新しい国立公園は今年誕生した奄美群島国立公園です。
慶良間諸島はかつてカツオ漁が盛んで、ケラマガツオと呼ばれたかつお節はブランドでした。カツオ漁の衰退とともに島々の人口も激減しました。しかし、観光客ダイバーたちの間で慶良間の美しい海の人気に火がつき、観光客が増え始めました。
同時に民宿も増え、観光地として成長していきます。座間味村でみると、今では年間観光客は10万人を超え、人口の100倍超です。これからは閑散期の対策が島の活性化につながると思っています。
そんな慶良間の観光資源というと、やはり豊かな自然です。しかし自然は保全の努力を怠ってしまうと簡単に失ってしまうものです。一度失うと簡単に元に戻せません。
「海の熱帯雨林」と例えられるサンゴ礁は、地球上の全海域の中ではたった0・2%に過ぎないにもかかわらず、海洋生物の種類の4分の1から3分の1が生息しているとも言われるほど生物多様性が豊かな場所です。
ほかに水産資源の宝庫、天然の防波堤、貴重な観光資源という役割も果たしています。しかし、サンゴ礁はどんどん減っており、現在では75%が危機的な状況にあるといわれています。
原因としては白化現象、オニヒトデの異常発生、地球温暖化による海水温の上昇、生活排水や工業廃水の流入による環境の悪化などがあります。
一時期、阿嘉島のニシバマなど人気のダイビングスポットのサンゴがダイバーらに踏み荒らされ、壊滅状態になりました。そのとき、ダイビング事業者や漁協が中心となってそのポイントを閉鎖しました。
すると3年間でサンゴは驚異的な復活を見せました。その後オニヒトデにやられたこともありましたが、今ではとてもきれいな海としてよみがえっています。
サンゴは、卵と精子の固まりであるバンドルという形で出産します。バンドルが海上に浮かび上がると卵と精子に別れ、それぞれ受精相手を探す旅に出るのです。
受精後はプラヌラ幼生となり、自分の居場所を探します。サンゴの産卵の特徴を利用して種苗を育てサンゴを増やすことも行われています。
阿嘉小学校の児童たちはサンゴの産卵の観察会も行い、阿嘉中学校の生徒らは体験ダイビング中に植え付けもしてもらっています。
阿嘉島には、サンゴ礁を紹介するビジターセンターを建築中です。センターを通して慶良間諸島の魅力をもっと広めていきたいと思っています。
(写図説明)こども調査隊の発表に多くの来場者が耳を傾けました
(写図説明)(右)サンゴ礁保全活動にも取り組むタレントの
砂川英依さんが司会を務めました。
サンゴは何で大事なの?
國井雅姫(今帰仁小5年)
慶良間諸島は、国立公園の中では陸域面積が最小ですが、海域面積はトップクラスだそうです。なぜかというと、美しい慶良間ブルーと呼ばれる透明度の高い海や、サンゴ礁など貴重な生き物が多いからです。
私(國井)が住んでいる今帰仁村にある赤墓という場所の海は透明度がかなり高く、たくさんのサンゴがあり魚もいます。
調査した渡嘉敷島のとかしくビーチは、その赤墓よりも透明度が高く、色とりどりの魚も多いように感じました。
魚たちにとってサンゴは大切なすみかです。人間にとっても、サンゴ礁がつくるリーフは台風や高潮などのときに天然の防波堤になります。また、美しいサンゴ礁は観光資源にもなっています。
サンゴの現状知ろう
名嘉山桂(安岡中2年)
しかし、今サンゴは危険な状況に陥っています。台風の接近が減り、温暖化による海水温上昇で、白化が進んでいるのです。
シロレイシガイダマシの異常発生などもサンゴが少なくなる原因に挙げられます。さらに、観光客がシュノーケルなどでサンゴを折ってしまう問題もあります。
サンゴがなくなると天然の防波堤がなくなり、台風の接近時に、被害が出るかもしれません。小さな魚がいなくなれば、大きな魚もいなくなってしまいます。
私たちは、10年後100年後の子供たちにこの鮮やかなサンゴを実物で見せてあげたいです。
私たちはサンゴについて考えたり、行動したり、現状を知らない人に教えてあげることなどができます。自分たちにできることを精いっぱいやっていきたいです
(写図説明)シュノーケリングでサンゴ礁の実態を調査しました=7月26日、阿嘉島近海(沖縄美ら島財団提供)
人と動物の関わり合い~お返しをして共存へと向かうために~
佐野一斗(当山小6年)
私たち人間は動物や植物などの生き物から、たくさんの物をもらっています。その中には人間にとってよい事や悪い事、迷惑になっている事があります。
阿嘉島に生息する国の天然記念物ケラマジカは、森の餌の減少や、観光客が与えた餌などによって、よく集落に下りるようになりました。
島の農家さんたちが大切に育てた野菜を食べてしまったり、民家や公園に侵入してしまったりしています。
外に追い払いたくても天然記念物は触れてはいけないというルールがあるので手を出す事ができず、農家さんたちはとても困ってしまうそうです。
対策として道には高い鉄柵があったり、花壇にも網やフェンスをしたり、子どもたちの遊ぶ公園の出入り口にはグレーチングと呼ばれるシカの脚がはまる側溝を設置していました。
ケラマジカに学んだ
仲座空音(琉大附属中2年)
私たちはこの経験から、自然からもらうよい事を守り、悪い事を解決するのには、動植物の今の状況を知るために調査をする事が必要だと思いました。
私たちなりに考える「共存」とは「家族のように平等で仲良く暮らす事」です。「家族のように」支え合い「平等」に暮らす事、それが「共存」なのではないでしょうか。
わたしたちは、動物や植物などの生き物に「共存」するために必要なお返しをできていない事に気づく事ができました。
そうであれば次に何をするべきなのかを考えて、行動に移さなければなりません。ポイ捨てされたごみを後から自分が捨てるなど、自分ができる小さな事からはじめていきましょう!
(写図説明)国指定の天然記念物ながら住民の畑を荒らすなどの
被害ももたらすケラマジカに出会いました=7月26日、阿嘉島
命あるものたちのために~人によって運ばれた
「罪なき犯罪者」たち~
福永梢子(潮平小6年)
慶良間諸島国立公園には、希少な動植物が生息しています。しかし、豊かな自然がある中、それをおびやかす外来種がいます。私たちは、外来種をどのように扱い、どのような対策を取ればよいのでしょうか。
私たちが慶良間諸島で学んだグリーンアノールとシロアゴガエルという2種類の特定外来生物について紹介します。
グリーンアノールは在来種のキノボリトカゲなどと同じ場所で生活するため、餌や住む場所の取り合いが起こります。
そんなグリーンアノールですが、原産地である北アメリカ東南部では、在来のブラウンアノールに食べられ、もう少しで保護対象になるということです。
同じ種でも国によって状況が違うことに驚きました。東南アジア原産のシロアゴガエルも、在来のカエルと餌や住む場所の取り合いをしています。
外来種は人間のせい
備瀬哲平(安慶田中2年)
僕は外来種について学ぶ前は「外来種は駆除されて当たり前だ」と思っていましたが、学習した後は「外来種は在来種に悪い影響を与えるが、それは人間が持ち込んだからであり、決して駆除されるべき存在ではない」と思うようになりました。
私たちは、環境省のレンジャーさんからあるルールについて学びました。
それは外来種を、(1)入れない、(2)捨てない、(3)広げない-という3つのルールです。
私たちが命あるものたちのためにできること、それは生き物たちのことを考え、むやみに持ち運ばないことです。持ち運んだことで、犠牲になる生き物たちがいるからです。
そんな生き物たちを少しでも減らすために、3つのルールを私たち人間が守っていかなければなりません。
(写図説明)人が運んできたのに外来種として駆除されるグリーンアノールに触れ、
人間の身勝手さについて考えました=7月25日、座間味島
美しい島の危機~人が自然に与える影響について学ぶ~
赤嶺貴一郎(城北小6年)
私たちが訪れた慶良間諸島では、サンゴの破壊やウミガメなどの生物への被害、漂着ごみが問題となっていました。
特に漂着ごみに関しては沖縄本島でもよく見かけるので、3年前に国立公園に指定された慶良間諸島はどうなのか、視察に行く前から気になっていました。
残念ながら慶良間諸島の砂浜にもたくさんのごみが流れ着いていました。プラスチック片や瓶などがほとんどで、外国から流れ着いたものもありました。
砂浜のごみはウミガメの産卵の妨げになる恐れがあり、産卵の失敗が続くと、ウミガメは卵を海中に産み捨ててしまうこともあります。
貴重な命を無駄にしないために、きれいな砂浜を保たなければなりません。
産卵の浜に漂着ごみ
奥平柊(球陽中1年)
そのためには、ごみの投棄に対する取り締まりを厳しくすることや条例を改めることなど、地域の人々が一丸となって取り組むことが解決につながると思います。
しかし、最も根本的なことは、ごみをちゃんとごみ箱に捨てれば良いということです。「環境を大切にしよう」という一人一人の意識です。
サンゴの減少、ごみ問題、外来種など人が自然に与える悪影響は沖縄本島や他の島々でも問題になっている事です。
なぜそういう悪影響が起こるかというと、ほとんどが「悪影響につながるとは知らなかった」「これだけなら大丈夫」という、無意識、無関心から来るものです。
慶良間諸島に行って分かった今の沖縄の状況を、私たちが伝えていきたいと思います。
(写図説明)ウミガメが産卵にやってくる場所を視察。
漂着ごみを減らす決意を新たにしました=7月25日、座間味島
(写図説明)慶良間ブルーと呼ばれる美しい慶良間海域のサンゴ礁の現状を視察する
沖縄・奄美こども環境調査隊=7月27日、渡嘉敷島近海(ウェブキャスト・エコ提供、小型無人機から