大切な沖縄と奄美の自然環境を守るために、一人一人ができることは-。「沖縄こども環境調査隊2013」の視察最終日となる8月2日、奄美市名瀬のAiAiひろばで「沖縄・奄美こども環境サミット」があり、沖縄と奄美の隊員が3泊4日の視察を通して学んだことを振り返り、意見を交換しました。隊員の発言要旨と視察の様子を紹介します。
マングローブ林で1人一つごみ拾い。奄美大島の大自然に恩返し=1日、鹿児島県奄美市
大切な自然 残すぞ
上原玄武君(浦添市立港川小6年)
奄美大島の夜の浜辺で、ふ化したばかりのアカウミガメの子どもを見ることができました。調査隊に入って、ウミガメを調べたかったので興味津々でした。カヌーに乗ってマングローブ林も探検しました。ヒルギは余分な塩分を葉にためて落とすと聞いたので、黄色い葉をかじってみるとしょっぱかったです。自然が将来なくならないように、自然のすばらしさや大切さを未来に伝えなくてはなりません。みんなにも、その大切さを知ってもらいたいです。
奄美は人・生物共存
親富祖和香那さん(国頭村立安波小6年)
奄美大島の調査では、沖縄と奄美は環境が似ているけれど、人と自然が共存できている気がしました。奄美大島には人の住んでいる街のすぐ横にある川にも、ヨシノボリやテナガエビ、沖縄の源河川にもいなかったリュウキュウアユがいました。奄美のマングローブが、リュウキュウアユにとってすみやすい場所を作っていることも分かりました。沖縄でも「マングローブを利用してリュウキュウアユを増やせないのか」。調べてみたいと思いました。
住用川でリュウキュウアユを探す隊員。姿を見つけたとたんに歓声が上がった=1日
貴重な動物見たよ
藤原のぶさん(今帰仁村立天底小6年)
夜の森では、アマミノクロウサギ、ルリカケス、アマミヤマシギ、オオトラツグミなどの貴重な動物を見ることができました。沖縄で絶滅したリュウキュウアユも奄美にはとてもたくさんいたのでびっくりしました。最終日には沖縄・奄美こどもサミットで学んだ事をまとめ、発言する事ができました。奄美の調査隊の意見も聞くことができ、よかったと思います。この体験・経験を沖縄に持ち帰り、シンポジウムでもいい発表ができるように頑張りたいです。
無駄な冷房やめる
外間円佳さん(与那原町立与那原小6年)
奄美ではマングースの駆除をして、アマミノクロウサギなどの動物が増えているそうです。マングースのような外来種のほかにもノイヌ、ノネコがアマミノクロウサギなどを食べてしまうことがあるそうです。私が沖縄・奄美の豊かな自然を守るためにできることは責任を持って行動する、今飼っている犬を大切に育てる、ごみを拾う、クーラーなどを無駄に使わないことの四つしかないけど、きちんと守って豊かな自然を守っていきたいです。
奄美大島でいちばん長い住用川で、広大なマングローブ林を探検=1日
学んだこと伝える
金城さくらさん(大宜味村立大宜味中1年)
夜の森で出合ったアマミノクロウサギ、オオトラツグミなど計7種の生物のうち、そのほとんどが奄美の固有種でした。沖縄と変わらない景色なのに固有種がたくさんいたので、残してほしい環境だと思います。マングローブも「必要」と思って種を植えていますが、小さな生物はすみかを失います。「よいことだ」と思っていることが、生物たちの生態(せいたい)系を壊(こわ)してしまうことにつながるということです。奄美で学んだことをたくさんの方に伝えていきたいです。
回復には時間 痛感
高山真之介君(私立沖縄カトリック中3年)
奄美大島ではマングースの生息域がだんだん狭くなっているそうです。ことしに入ってからは生息数が200匹を下回ったことで、奄美大島の固有種の生息域が広くなったことに驚きました。奄美大島と沖縄の環境調査で一番痛感したのは「環境、生物や森などの生態系を壊すことはできるが、一度壊れた環境を元に戻すためには、たくさんの時間と労力が必要になる」ということです。沖縄と奄美以外の環境や生態系についてもたくさん知りたいです。
真っ暗な夜の森に現れた天然記念物オオトラツグミの写真を撮影する隊員=7月30日
命救う小さな行い
比嘉咲さん(読谷村立読谷中3年)
奄美での4日間、アマミノクロウサギ、リュウキュウアユ、アマミヤマシギなど、たくさんの固有種や、雄大なマングローブ林、キラキラと輝くサンゴ礁、小さな体でしっかりと歩くふ化したてのウミガメなど、すばらしい生き物たちや自然に出合いました。私たちの小さな行い一つで、一つの小さな命が消えていく。逆に考えれば、小さな行い一つで一つの小さな命を救えるのです。改めてこのすばらしい生き物や自然を守り、継承する必要性を実感しました。
環境再生に人の力
真栄田あかりさん(読谷村立古堅中3年)
夜の森で天然記念物のアマミノクロウサギを発見したり、ふ化したウミガメが海に出るのを見届けたり、リュウキュウアユがたくさん泳いでいるのを見たり、自分たちで捕まえたエビを夕食にしたり。数多くの体験をするうちに、自然はすごく面白いと思いました。同時に、この楽しさを、大勢の人に感じてもらいたいと思いました。人間が環境破壊をしたせいで、多くの生き物がすむ場所を失ってしまったけど、自然を再生できるのも、また人間だと思います。
「奄美こども環境調査隊2013」隊員
渡邊望未(わたなべのぞみ)さん(奄美市立小宿小5年)
吉田愛恵(よしだまなえ)さん(奄美市立朝日小5年)
森田凛(もりたりん)さん(奄美市立朝日小6年)
杉尾陽菜(すぎおひな)さん(奄美市立手花部小6年)
久保田詩織(くぼたしおり)さん(奄美市立名瀬小6年)
山下歩美(やましたあゆみ)さん(奄美市立名瀬中1年)
「沖縄こども環境調査隊2013」隊員
上原玄武(うえはらげんぶ)くん(浦添市立港川小6年)
親富祖和香那(おやふそわかな)さん(国頭村立安波小6年)
藤原のぶ(ふじわらのぶ)さん(今帰仁村立天底小6年)
外間円佳(ほかままどか)さん(与那原町立与那原小6年)
金城さくら(きんじょうさくら)さん(大宜味村立大宜味中1年)
高山真之介(たかやましんのすけ)くん(私立沖縄カトリック中3年)
比嘉咲(ひがさき)さん(読谷村立読谷中3年)
真栄田あかり(まえだあかり)さん(読谷村立古堅中3年)
環境サミット 私の意見
外来種の増加 人間に責任
-奄美大島で聞いた自然の声を言葉にしてみよう。
藤原のぶさん オニヒトデが増えたのは地球温暖化が影響していると思う。オニヒトデを非難する声が多いが、そもそも人間がクーラーを使いすぎたからではないのか。
杉尾陽菜さん ハブは毒があるといって捕まえる人が多いが、ハブも生き物。かわいそうだ。
山下歩美さん マングースにも命がある。勝手に連れてきておいて、ハブを退治しないとなったら捕獲するなんて無責任だと思う。
外間円佳さん 外来種が増えている問題は人間のせい。かわいそうだし、人間が責任を取らないといけない。
-沖縄や奄美の未来を想像しよう。
比嘉咲さん 私たちが将来大人になった時、どこの山、川、海に行っても生き物がいなくなりそうで怖い。
山下歩美さん 奄美は世界自然遺産に登録を申請していて、マングローブはとても大切。だがマングローブ林にはごみがたくさん引っかかっていた。50年後はごみが落ちていないようにしたい。
上原玄武君 環境破壊が起きると、今は普通に見ることのできる生き物が減っていく可能性がある。みんなで協力してごみを減らしていきたい。
心響く体験活動増やそう
-未来のために、自分ができることを考えてみよう。
渡邊望未さん 飼っている犬や猫などのペットを捨てないようにしたい。クロウサギやネズミなどを食べてしまう。珍しい生き物が減っていく。
久保田詩織さん ごみ拾いをすること。毎日でなくてもいい。例えば月に1度、各地域で行われる市民清掃に参加することはできる。奄美をきれいにしようと、周りの人たちに呼び掛けることから始めていきたい。
親富祖和香那さん 私の住んでいるところは自然がいっぱい。休日にはドライブを楽しみに来る人も多いが、車やバイクのスピードがすごく速い。そこにヤンバルクイナが出てくると事故が起こる。大きくて見やすい看板を作って、スピードを出さないよう訴えたい。
森田凛さん 大人たちがマナーを守らないのは「いけないことをしている」と分かっていないからではないか。ポスターなどでマナーを守らないのは悪いことだと呼び掛けることが大切。そして呼び掛けている私たち自身も、マナーを守っていくことが必要だ。
真栄田あかりさん 環境調査隊に参加して、環境を守らなければいけないことに気が付いた。実際に体験しなければ、環境を守ろうとは思わない。体験すれば心に響く。これからは体験活動を増やしていけたらと思う。
たばこのポイ捨て やめて
-最後に、大人たちへ伝えたいことは。
比嘉咲さん 以前「ごみ拾いをしよう」と大人に持ちかけたことがあったが「ごみ拾いよりも勉強をしなさい」と言われた。勉強が大切なことも分かるが、環境が悪くなればそれこそ本当に生きていけない。大人たちも一緒に動いてほしい。
高山真之介君 ごみを捨てるのは簡単だが、拾う時は悔しい気持ちになる。実際に拾ってみて感じることがある。この悔しい気持ちを持ってもらいたい。
吉田愛恵さん たばこのポイ捨てや道にごみを捨てるのはやめてほしい。奄美の自然を守るために大人たちへ伝えていきたい。
金城さくらさん 沖縄では野鳥観察をしているが、道ばたのごみが目立つ。ごみが増えると鳥が減るという変化も見られた。こういうことがあっていいのか、いつも考える。道にごみを捨てるということは悪いことだと分かっているはずなのに、なぜごみを捨てるのか。大勢の人に考えてほしい。