珊瑚 未来につなぐ
沖縄こども環境調査隊2014のシンポジウム「地球の声を伝えよう~サンゴの生態と海の自然環境~」(主催・沖縄タイムス社、共催・沖縄美ら島財団)が7日、浦添市のてだこホールで開かれた。7月に活動をスタートさせた隊員たちは、沖縄本島で事前学習を重ね、8月4~7日にかけて石垣島を視察。サンゴを取り巻く海の環境や生態系、山、人間とのつながりなどについて学び、調査した。集大成となるシンポジウムでは、「美しいサンゴを未来に残す」と宣言。自然保護活動に積極的に取り組むことを誓った。協賛は沖縄海邦銀行、沖縄コカ・コーラボトリング、環境ソリューション、我那覇畜産。
サンゴと関わる生き物
生物多様性の輪を守る
仲宗根由紀(読谷中学校3年)
竹尾慎太郎(石田中学校1年)
竹尾慎太郎仲宗根由紀 サンゴは植物に見えますが、クラゲやイソギンチャクの仲間である刺胞動物です。組織内にたくさんの褐虫藻を共生させ、補い合いながら生きています。サンゴは、ポリプと呼ばれる小さな個体が集まり、群体を形成しています。サンゴ礁とは、造礁サンゴが作った地形を言います。
備瀬崎での事前学習では、石のように固い、イシナマコ、触れると赤い分泌物を出し、体表面に砂が付着しているクロナマコ、体表面に砂が付着していないニセクロナマコ、体色が明るい栗色のクリイロナマコを観察しました。
ナマコは砂についている有機物を食べ、砂をきれいにします。その結果、海水が濁りにくくなり、日光がサンゴに届きやすくなり、褐虫藻が光合成しやすい環境をつくります。
サンゴガニというサンゴを守る生き物がいます。サンゴを食べるオニヒトデを攻撃します。サンゴがなくなれば自分のすみかがなくなるということが分かっているからだと思いました。また、サンゴにかかった堆積物を払い、褐虫藻が光合成しやすい環境をつくり、サンゴを守っています。
クロスズメダイは、縄張り意識が強く、至近距離で写真を撮ると、かみついてきました。自分の縄張りでもあるサンゴを「守ろうとしているのではないか」と思いました。サンゴは、光合成をするだけでなく、生き物にとって大切なすみかになっています。
しかし、白化現象という問題があります。温暖化による海水温の上昇や塩分濃度の変化、水質汚染などのストレスがあると、褐虫藻が出て行きます。サンゴが白く見えるのは、褐虫藻を失い、サンゴ本来の白い骨格が透けて見えるためです。米原ビーチでも、白化したサンゴを確認することが出来ました。
石垣島で、衝撃を受けたことが2つありました。魚が人間を恐れないことです。餌付けされ、近づいても逃げませんでした。
2つめは、折れたサンゴを目撃したことです。人に折られたと思われます。キレイな海だからこそ、観光客が集まり、このような問題が起こってしまいます。
「魚に餌付けしない」「サンゴを踏まない、蹴らない」といった注意を呼び掛けることが必要です。
サンゴの役割は大きく、無くてはならない存在です。海や生物を守るため、生物多様性の輪を守っていくことが大事です。
サンゴとオニヒトデの関係性
沖縄の海に関心持とう
名嘉栞里(泊小学校5年)
幸地佑(東風平中学校3年)
幸地佑名嘉栞里 オニヒトデとは、ヒトデの仲間で、成長とともに腕が増えていき、最大15本ほどになり、全身がとげに覆われ、毒もあり、危険生物として扱われている生き物です。胃を出して、サンゴを溶かしながら食べます。
オニヒトデを食べる代表的な生き物はホラ貝です。意外かもしれませんが、サンゴも小さなオニヒトデを食べることがあります。
ホラ貝は、オニヒトデだけを好んで食べるわけではなく、大量発生を抑える鍵にはならないようです。大量発生した生物をほかの生物で正常な状態に戻すことはできないそうです。
人間に駆除されているのに「何故オニヒトデは減らないのか」と思うかもしれませんが、海水温上昇によって小さいオニヒトデを食べるサンゴが減ったからだと考えられます。また、ホラ貝を人間が取り過ぎていることも原因の一つだと考えられます。
実は、オニヒトデは周期的に大量発生していて、1969年に恩納村で初めて確認され、ほかの地域に広がっていったと言われています。これまでの大量発生では、オニヒトデがサンゴを食べても、新たなサンゴが成長することで、数は保たれていました。
しかし今は、サンゴが成長する前に食べられてしまいます。海水温上昇による白化も起きているため、大きな問題になっていると考えられています。
大量発生の原因ははっきりと分かっていませんが、データから生活排水が海に流れ、オニヒトデの成長が促進されることが原因だと考えられています。
悪者のように話してきましたが、オニヒトデは肥料や難病の特効薬になる可能性もあります。
オニヒトデはマングースなどの外来種とは違い、健全なサンゴ礁にも生息しています。生態系の1つであり、成長が早いサンゴを好んで食べるので、限られた種類のサンゴだけが増えすぎるのを防ぎ、サンゴ礁の生態系を保つ役割もあるので、「いなくても困らない」ではありません。オニヒトデも役に立つことも知ってほしいです。
私達にできることは主に4つあります。
「生活排水を工夫して減らす」「サンゴに、自分の住む沖縄の海の現状に関心を持つ」「ポイ捨てをしないようにする」「環境問題について知り、できることをすすんでやる」
この4つをみんなですすんで行う事でサンゴの環境は変わるはずです!
人とサンゴがこれまで行った事とは?~今後、自分達はまず何をするべきか~
開発のあり方考えよう
小村美亜(琉球大学付属中学校3年)
上原拓也(小禄中学校3年)
上原拓也小村美亜 沖縄では、多くのサンゴを見ることができます。また、サンゴのおかげで成り立っていることも多くあります。サンゴは木と同様に二酸化炭素を吸収し、酸素を排出します。酸素の排出量は木の6~16倍と言われています。
また、海を浄化し、天然の防波堤としての役割も果たしています。サンゴを中心とした海の生き物たちが造るサンゴ礁は、海にせり出した構造物のようになっていて、外からくる波を受け止め、砕いてくれます。
ほかにも、海岸に白い砂浜を造り、観光客を呼びこんだりと非常に役立っています。
波や津波の被害が小さくなっている例として、1771年に起きた「明和の大津波」があります。津波が大きすぎて、サンゴ礁で抑える事は出来ませんでしたが、サンゴ礁がなければ被害はもっと大きかったといわれています。
沖縄では、台風接近時に高い波をサンゴ礁が抑えてくれます。本土では、沖縄ほどサンゴが生息していないので、抑える事ができません。
サンゴの減少をとめようと、養殖が行われています。環境を守るために良いと思われる養殖ですが、体験していくつか気になる点がありました。
サンゴを土台にとめるための針金を海に入れて大丈夫なのか、ということです。微生物に分解される前に、魚たちが食べてしまったら消化できずに死んでしまうのではないでしょうか。
また、サンゴの形は潮の流れなどから決まります。養殖という自然とは違う環境では、本来とは違った形にサンゴが育ってしまうそうです。
これは想像ですが、養殖というサンゴを扱う技術が進めば、卵などから品種改良をする人が出てくると思います。その品種改良したサンゴを海に放せば、海の生態系は崩れていきます。
しかし、サンゴを守ろうと人が努力していることは、とても素晴らしいことだと思いました。
海を開発しなければ、人間の生活は成り立ちません。しかし、開発するとサンゴ礁が果たす機能を失うことになります。今後、開発をどうするか、考えるべきだと思います。
養殖は工夫されてはいますが、問題点もあります。養殖の必要が無い海を、私たちは造っていくべきだと思います。これまで以上に、大勢の人たちがサンゴについて、関心を持ってくださるとうれしいです。
サンゴを取り巻く環境問題
環境守るのは人の責任
田渕鈴夏(真喜良小学校6年)
外間ちひろ(与那原中学校3年)
金城凪沙(西崎中学校3年)
金城凪沙外間ちひろ サンゴの被害は、人による被害と環境や生物による被害の2つに分けることができます。
環境や生物による被害には、オニヒトデなどの食害、海藻の増加による褐虫藻の光合成の阻害、大型台風、白化などがあります。人による被害には、赤土流出や水質悪化、破損、乱獲、温暖化があります。
石垣島視察で一番興味を持ったのは、赤土の流出についてです。
白保にある「しらほサンゴ村」では、近くの海にどのくらいの赤土が含まれているのか、SPSS法という方法で調べてみました。結果を見て、赤土は見えなくてもたくさんあることを知りました。
田渕鈴夏 赤土は、畑などから流出し、海を漂います。すると、褐虫藻の光合成を阻害します。また、赤土がサンゴを覆うことで呼吸できなくなり、白化・死滅してしまいます。赤土の流出量は年々増えていて、サンゴにとって危険な状況が続いています。流出の理由は、不適切な開発、農地、地形・地質などがあります。
自然の地形・地質からだったら赤土が流出してもおかしくないですが、畑から流出しているのは人間の責任で、人間が責任を持って防ぐ必要があります。
白保では、流出を防ぐために月桃を植樹していました。月桃は、成長するごとに根を張るので、赤土に絡まって流出を防ぐことができるそうです。
また、ガイドさんは「住宅と畑が近くに無く、山が近くにある海はきれい」と教えてくれました。実際に山と海を見て、人間は海と山に挟まれて生活していて、直接関わっていると感じました。
サンゴのために、できることはたくさんあると思います。
「生活排水を直接海に流さない」「ポイ捨てをしない」「ごみを減らす努力をする」「エアコンの設定温度を1度以上あげる」などです。
石垣島と沖縄本島での研修を通して、自然を破壊したのが人間であるなら、人間が自然の生態系を保っていくようにしないといけないと思いました。また、海と山はつながっていることを実感することができ、自然の環境は、人間の行動で決まってくると思いました。
人間の生活は、直接海や山の環境と繋がっています。将来、沖縄の海にサンゴを増やすため、今以上に環境にいい生活をしてください。私たちが私たちにできることをやってみませんか?
基調講演 大堀健司エコツアーふくみみ代表
豊かな生態系 人に活力
サンゴ礁ってホントに守らなければいけないの?~環境教育的視点からのサンゴ礁保全~
シンポジウムでは、石垣島で自然観察ガイドをしている「エコツアーふくみみ」代表の大堀健司さんが「サンゴ礁ってホントに守らなければいけないの? 環境教育的視点からのサンゴ礁保全」をテーマに基調講演した。大堀さんは、サンゴ礁の豊かな生態系が人間に笑顔や活力を与える、として「サンゴ礁に守られているのは私たち。体の一部だと思って大事にしてほしい」と呼び掛けた。
石垣島に住んで14年になります。1998年の白化現象から立ち直りつつあった2007年7月に海水温が上がり、大規模な白化がありました。
奄美大島で大きな被害が出た10年10月の大雨では、石垣島でも5日間降った。雨水が砂浜を削り、砂と雨水がサンゴ礁に流れ込み、たくさんのサンゴがあっというまに埋まり、死んでしまった。また、淡水が一気に流れ込んだので、土砂がこない場所でもサンゴが白化してしまいました。
そして、11年8月のオニヒトデ大量発生。回復しないうちにいろんなことが起きました。
実は、サンゴは守ってあげなきゃいけないほど弱い生き物ではない。人間が海に与えている影響を減らし、本来の環境に戻せば、大きくなるはず、と思っています。
サンゴとかサンゴ礁の生き物たちは、私たちの心を元気に、幸せにしてくれる。仕事や家庭で悩んでいる人がエコツアーに参加し、サンゴ礁で遊ぶと、悩んでいることがばかばかしくなった、ということがよくあります。
守られているのは、実は私たち。自然は、健康に生きていくために必要なものだととらえてほしい。だから自分の体のように大事にしてもらいたいと思っています。
自然を守ることにも頑張りすぎないようにしたい。本来、自然はすごいクール。目先のことにとらわれず、長い時間感覚で、ちょっと離れてみることが大事。クールな気持ちで自然と付き合いましょう。
少しでも先まででサンゴ礁が豊かで、美しく元気であってほしい。さらに、たくさんの人がサンゴ礁から元気をもらい、笑顔になって、幸せな世の中につながってくれるといいな、と思っています。