「開発」「保全」で 揺れる南の楽園
バリ島訪問の隊員が体験記

 世界各国が抱える環境問題を現場で体験し、保護活動の取り組みを発信してもらいたい。県内の児童・生徒を対象にした学習ツアー「沖縄こども環境調査隊」(主催・沖縄タイムス社、共催・海洋博覧会記念公園管理財団)隊員の中学生4人が3月31日から4月6日の日程で、インドネシア・バリ島を訪問した。琉球大学の馬場繁幸教授の案内で、子どもたちは、ごみ処理問題やマングローブの育成など「観光開発」と「自然保全」のはざまで揺れているバリの現状を調査。地元中学生との交流や文化にも触れ、今、自分たちにできることは何かを考えた。隊員4人のリポートを紹介する。

2009バリ島集合写真.jpgこども環境調査隊員の左から知念栞菜さん、新崎聖華さん、松山大海君、伊差川舜君=インドネシア・バリ島

伊差川舜君(喜瀬武原中2)
身近なごみ一緒に考えて

伊差川舜.jpg 最初は、マングローブのことについてよく分からなかったので不安でしたが、「マングローブ情報センター」の羽鳥祐之チーフアドバイザーからマングローブについていろいろ聞きました。
 まず、マングローブの世界の面積は、1800万ヘクタールで、その中でもインドネシアは、450万ヘクタールで世界一だそうです。でも、世界のマングローブの面積でも日本の面積の半分だと聞き、とても貴重だと思いました。また、津波などの災害を防いでくれて、土砂からサンゴを守る働きや魚のすみかになるなど、とても環境にいい植物だと知りました。ほかにも、マングローブの森には、野鳥が100種類も集まってくるそうです。しかし、そのマングローブが年々、減ってきているそうです。原因は、過剰伐採や住宅地にするための埋め立てだそうです。また、埋め立てをすると潮流の変化でマングローブが枯死するそうです。
 僕が一番ショックを受けたのは、マングローブの森にたくさんのごみがあったことです。村の人々が川に流して、たまったものだそうです。ごみがあるとマングローブの通気根にビニール袋のごみが挟まり、マングローブは首をしめつけられた状態になるそうです。
 羽鳥さんたちは、7年間ごみがマングローブの森に流れてこないように村の人々と話し合いをしたり、ごみ拾いをしたそうですが、効果はなかったそうです。馬場先生は、「ごみ問題は世界が協力し合って解決するしかない」と言っていました。
 僕は、環境調査隊で体験学習し感じたことは、マングローブはとても貴重で大切にしていかなければならないということです。また、僕たちに身近なごみ問題について、地域の人や友だちと一緒に、あらためて考えさせてくれる機会を与えてくれたと思います。

知念栞菜さん(伊江中3)
世界の現状学び行動へ

知念栞菜.jpg バリ島にはいたる所にマングローブがあって、「こんなにあるなら、なんの問題もない」と私自身、初めは考えていました。
 私たち調査隊は「マングローブ情報センター」に行き、広い敷地にマングローブがたくさん植えられているのを見ました。同センターの羽鳥チーフアドバイザーから「マングローブは、土砂崩れや津波の被害を少なくするために大切なもの」ということを聞きました。マングローブを増やすと、二酸化炭素が減って住みやすくなるので、マングローブを大切にして増やした方が良いと思います。
 でも一方で、村の人々がマングローブを切ったり、ごみを捨てたりして環境を破壊していると聞いて、とても複雑な気持ちになりました。
 羽鳥さんに「どうしたらいいと思いますか」と聞かれたけど、その時はあまり良い案が浮かびませんでした。でも、帰国してゆっくり考え浮かんだ案があります。
 それは、私が撮影したマングローブの写真やごみの写真を友だちや家族、周りの人に見せて話し合い、今、世界で起きている問題について考えてもらうことです。そうすれば、みんなが環境問題に興味を持ってくれると思ったからです。これからも、環境問題について、いろんなことを勉強し、行動していきたいと思います。

松山大海君(宮古島北中1)
生水飲める日本は幸せ

松山大海.jpg 僕の生まれて初めての外国。バリは、「プラウ・デワダ(神々の住む島)」として有名です。関西国際空港から約6時間半でデンパサール国際空港について、一番最初に感じたのは湿気がすごかったことです。僕は「うわっ…。霧ふきを、体全体に直接かけられているぐらいジメジメしてる」と、思わず声に出すほどでした。バリの観光ガイドの人に尋ねたら、「いつもバリはこのぐらいじめじめしているよ。赤道にも近いし…。でも、今は、雨季と乾季の変わりめだから、もっと雨季の方がすごいよ」といわれ、僕は「ひぇー。雨季じゃなくて良かった」と言ったら、ガイドさんは笑っていました。
 また、バリの人たちは、ほとんどがヒンズー教徒であるため、いたるところに寺院や、神像が建てられています。ヒンズー教では牛肉は食べずに、ぶた肉や鳥肉を食べます。一番気に入った食べ物は、ナシ・ゴレン。バリのチャーハンです。環境調査隊で、一番困ったのが飲料水でした。水道水を生で飲むと、おなかをこわしてしまうので、いつでも、蛇口をひねれば、飲める日本の子どもたちは幸せだなと思いました。
 まだまだ、ケチャックダンスや、銀細工の工場など、たくさんの素晴らしい思い出をつくることができました。僕は、大人になっても一生忘れることはないでしょう。

新崎聖華さん(那覇中1)
問題解決に話し合い大切

新崎聖華.jpg 私たち「沖縄こども環境調査隊」は、春休みを利用してインドネシアに行き、マングローブについて調べました。その中で印象に残っているのが、デンパサール第一中学校との交流です。私たちと同じ中学生の子どもたちと、環境問題について意見交換しました。
 まず最初に驚いたのは、日本語のクラスがあって中学1年から3年生まで、インドネシア語、英語、日本語を話すことができて、すごいと思いました。みんな明るくて、とてもしゃべりやすかったです。スポーツは、バスケやテニスが人気だそうです。
 ごみ問題は、かなり深刻になっていると聞きました。バリにはごみを分別する習慣がなく、ごみを処理できるちゃんとした設備がないそうです。ごみは、すべて土に埋めているそうで、バリの生徒も環境問題についてよく話し合っているそうです。
 学校で環境に関する発表を聞いて感心したことは、きたない水をきれいにする方法。ペットボトルに綿や砂を入れて水をきれいにすることを学びました。水道水が飲めないバリでは、水の問題に意識が高いと感じました。また、「ジャムール」というキノコを使った紅茶づくりなど、たくさんのことを教えてもらいました。
 ごみ問題は、ひとりでも多くの人たちが現状を知り、伝えることをしないといけないと思います。また、ほかの国も協力し合わないと、この問題は解決しないと思いました。
 私も考えるだけでなく、それを行動に示し、沖縄でできることから始め、インドネシアバリ島の環境を、世界の環境を今よりも良くしていけるように頑張っていきたいと思います。