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 真夏の沖縄を飛び出し、飛行機を乗り継ぐこと約13時間。降り立ったニュージーランドは、はるか昔、個性豊かで多彩な鳥たちが栄華を極めた南半球の島だ。その歴史や風土、そこに生きる固有の動植物の現状や課題と向き合い、自然を体で感じた旅となった。最終日はあいにくの悪天候で日程が一部変更となったものの、人間と自然との共生の在り方や外来種対策、開発と保護など、多くの問題を頭に詰め込んだ1週間だった。

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キウイ初対面・キウイと記念撮影させてもらった=8月13日、傷病鳥保護収容センター

【ニュージーランドの現状と課題】
 ニュージーランドは、哺乳(ほにゅう)類などの天敵がいなかったことから、キウイなどの様々な飛べない鳥が生息するユニークな地域である。人類が住み始めたのは、9世紀頃にポリネシア人が移り住んだところから始まる。そのころに大型の鳥「モア」が食料とされて絶滅したとされている。さらに、17世紀には牧畜などのために広大な面積の改変が行われ、ネコやイヌ、ネズミ、イタチ、ポッサムなどの飛べない鳥の天敵となる外来種が持ち込まれた。そのために生息数が激減して絶滅が危惧(きぐ)される種が増えていった。現在では、民間ボランティアによって運営されている野生動物のサンクチュアリーや、野生動物救護活動がおこなわれ、政府の環境保護省による自然保護地区での希少種の保護や飼育繁殖が行われている。(NPO法人どうぶつたちの病院・仲地学)

隊員レポート

久手堅翔太(興南中2年)
人間にも鳥にもやさしい沖縄に

 視察した施設では多くのボランティアが、森に住む動植物を管理しているそうです。視察の間、ニュージーランドの国や企業、そして人々はなぜこんなにも自然保護活動に積極的なのか、考えました。出た答えは、自然の尊さ、大切さ、すばらしさを知っているからだと思いました。そして何より、自分の国の自然を誇りに思っているからだと。今回の視察では、多くの場所で小学生を見かけました。自然を肌で感じることで、愛着もわくと思います。
 沖縄でも、まず自分の周りの自然を学ぶことから始めることが大事だと感じました。例えば、自分が住んでいる豊見城だと、漫湖や瀬長島などでゴミひろいや生物の調査をして発表するなどして、自然へ関心がわくようにすればいいと思います。
 沖縄にも外来種はたくさんいます。「たった一匹、捨ててもかまわない」という心がある限り、外来種との戦いは終わりません。自然を壊すのも人間、守るのも人間、増やすのも人間です。
 地上の森とサンゴなど「海中の森」は一心同体。一方が崩れると、もう一方も崩れてしまいます。地上の森を守ることは海中の森を守ることにつながります。今までは人間が住みやすい環境をつくってきたのが、これからは、人間も動物も住みやすい環境にしなくてはいけません。そのために、僕たちは何ができるでしょうか。環境学習の時間を作り自然に親しんだり、周りの自然を調べ、自分とどうかかわっているのか考え。ほかの学校と交流してみるのもいいと思います。
 沖縄を人間だけでなく、渡り鳥たちの観光地として、人間にも鳥にもやさしい「めんそーれ」な沖縄にしたい。国際自然保護連合のビル・ネイグルさんも言っていました。「論よりアクション(行動)しよう」。美ら島、美ら海を守るために!

具志〓也(高江洲中1年)
悪いのは外来生物だけじゃない

 1日目に行ったカロリ野生動物保護区は視界のほとんどが「緑」でした。また、鳥たちの生息がとても豊かでした。視察後、大事な事に気付きました。それは、ニュージーランドの保護の仕方と沖縄の保護の仕方は全く違うということです。
 ニュージーランドは「なくなった自然を、昔のように再生しよう」。それに対し、沖縄は「今残っている自然を守ろう」というように違いを感じました。ヤンバルなどの沖縄は、まだ森林が残っているからいいが、ニュージーランドは一度なくなってしまいました。これは大きい違いだと思います。なので、まず森を汚してほしくないので、「汚さないで」という呼びかけの看板を設けたらどうかなと思います。
 プカハ・マウント・ブルース国立野生動物保護区で初めてキウイを見ることができました。しかし、びっくり。僕はキウイは手のひらサイズと思っていたのですが、ニワトリぐらいの大きさでした。キウイは全部で5種類いるそうで、僕たちの見たニワトリくらいの大きさのキウイは5種類の中で一番小さいそうです、それを聞いてさらに驚きました。
 国際自然保護連合の一員で、環境保護、外来種対策活動をしているビル・ネイグルさんからも、お話を聞きました。「絶滅危惧(きぐ)種は、今いるときにしか保護できない。いなくなってからでは遅い」と気づいたという話が、とても印象的でした。
 また「マングースやネズミなどの外来種は自分たちで勝手に入ってきてキウイなどを襲ったのではない。人間がキウイのいるニュージーランドに外来種を入れた。悪いのは外来種生物だけじゃない」ということでした。
 たくさん学んで、見て、触れてきた、とても充実した5日間でした。
※(注=〓はへんが「示」でつくりが「右」)

大城さゆり(大宮中3年)
思ったよりも大きかったキウイ

 私がこの研修で一番印象に残っている事は、ファンガレイ・ネーティブ・バード・リカバリーという野鳥保護施設でキウイにさわれたことです。キウイとはニュージーランドの国鳥で絶滅の恐れがあります。今回、特別にさわらせてもらえました。キウイは思っていたよりも大きく、ニワトリほどの大きさで、とても温かかったです。
 ニュージーランドは「鳥の楽園」と言うようにキウイなどの鳥が多く生息する、哺乳(ほにゅう)類のいない島でした。しかし人間が入ってきたことで、鳥たちが住みにくい環境へと変化していったのです。ニュージーランドの人たちは、このような状況を反省し、積極的に自然を守り、キウイなど固有種保護に力を入れています。私たちがキウイハウスを訪ねた時も、多くの小学生が見学に来ていました。小さなころから、自然にふれることの大切さを実感しました。街中の看板や飛行機にも所々にキウイが描かれたり、「kiwi」の文字があったりと、国中でキウイを大切にしているように見えました。
 私たちの住む沖縄にはヤンバルクイナという貴重な鳥がいます。かつては今よりももっと広範囲に生息していたそうです。しかし、今では限られた範囲にわずかな数が生息するだけです。人間がハブ対策のために持ち込んだマングースや捨て猫などによって、減っています。車による交通事故でも命を失っています。
これまで私たちは、生活や便利さのために、自然を開発してきました。確かに開発も必要ですが、その結果、元から沖縄にいたヤンバルクイナなどの動植物が絶滅してしまうのはとても悲しいことです。
 私はこれからは、もっと開発と自然保護のバランスを考えながら、ヤンバルクイナなど沖縄の貴重な動植物を守っていかなければいけないと思いました。

香村栄美(沖縄クリスチャンスクール6年)
自然に触れてその大切さ感じて

 ニュージーランドでの初日、もともとの美しい自然を取り戻そうとしているカロリ動物保護区を訪れました。しかし昔の姿に戻すには、500年はかかるそうです。
 沖縄では外来種からヤンバルクイナを保護するためにフェンスで囲んだ場所がありますが、カロリも同じようにフェンスで守られていました。
 翌日、プカハ・マウント・ブルース国立動物保護区へ行きました。こちらには大きな種類の鳥もいました。非常に美しい羽をもつタカヘは、ニュージーランドの先住民であるマオリの人々に帽子の飾りに使うために捕られ、絶滅しそうになりました。しかし、その後、数の少なくなったタカヘを集めて繁殖させることで、絶滅の危機から救ったそうです。
 ここで初めてキウイを見ることができました。想像よりとても大きかったです。本物を見るまではキウイフルーツぐらいの大きさだと思っていました。
 自然のままのキウイの卵が、成鳥になる確率は5%しかないそうです。人々が持ち込んだネコ、イヌ、ネズミ、ポッサムなどの動物によって、卵やひなが食べられてしまうからです。そこで、キウイが産んだ卵を保護、ふ化させ、ある程度の大きさになるまで育ててから放鳥するそうです。そうすると、敵に襲われても自分で戦うことができます。
 人間が来る前のニュージーランドは、鳥たちにとってすてきな場所でした。しかし、人間たちが入ってきたことで、木を燃やして鳥のすみかをこわし、食料として絶滅させてしまいました。
 しかし、今のニュージーランドでは昔の自然を取り戻そうと努力をしています。沖縄も自然が豊かな島です。皆さんも自然に触れて、その大切さを感じてみませんか?

記者同行日誌

“小さな気付き”を大切に
特別報道チーム・儀間多美子

 広く深い森林の中を毎日のように歩き回り、ニュージーランドの豊かな自然を見て、聞いて、触れて、体感した4人。短いながらも、とても貴重な時間となったことだろう。
 当初は「外国」というだけで浮足立ち、信号機や空港のごみ箱にまで感激の声を上げる始末。だが、環境保護の世界的な先進地で、徹底した保護政策と人々の意識の高さに触れ続けたことで、最後はそれぞれの心に何かが芽生えたと思う。
 環境問題への意識がまだまだ低い、日本の現状を振り返るきっかけにもなった。「自分の周りでは、こんな活動している人いないよ」「帰ったら何ができる?」―。小さな気付きを自分の問題として落とし込み、課題や意見を交換したことも刺激になっただろう。学校は違うが思いを共有した友人もできた。この夏休みを、それぞれの財産にしてほしい。

協力
LinkIconNPO法人どうぶつたちの病院