2009年08月27日 【朝刊】

ニュージーランド編(上)
外来種への対策学ぶ

 県内の小中学生が世界5カ国を回り、環境や自然を考える「沖縄こども環境調査隊」の第3陣が、10日から15日までニュージーランドを訪問。4人の小中学生が、環境悪化や乱獲、外来種の侵入などで激減する、固有の動植物の保護と対策を視察した。
 8月のニュージーランドは冬のさなか。コートやマフラーに身を包んだ調査隊は、ウェリントン市のカロリやマウント・ブルース、オークランド市のワイタケレなどの野生動物保護区や森林公園を視察。どこも緑豊かな広大な敷地を、行政や企業団体が丸ごと管理している保護区だ。
 環境再生500年計画を打ち出すカロリは、8・6キロにわたる外来種侵入防止用のフェンスで囲まれた施設。入り口のバッグ・チェックでは「以前、客のバッグからネズミが飛び出したこともある。しっかりチェックして」の説明に一同、真剣な表情に。各施設で、念願のキウイや、絶滅したと思われていたクイナの一種・タカヘなどと対面し、感激の笑顔を見せた。
 楽園だった島にマオリやヨーロッパの人間がやって来たことで、あっという間に絶滅に追い込まれたニュージーランドの鳥たち。やんばるでも、人間によって森林を奪われ、持ち込まれたマングースや野猫などのため、ヤンバルクイナなどの希少種は激減している。
 大宮中3年の大城さゆりさん(15)は「農場開発などで森を開き、農家を優先させた結果。人間のためだから仕方ないではなく、バランスを考えなければ」と話し、自然に触れることの大切さを痛感。興南中2年の久手堅翔太さん(13)は「カロリには400人のボランティアがいると聞いた。自然を大切にする姿勢を、帰ってから分かりやすく伝えるのが調査隊の役目だと思う」と話した。(特別報道チーム・儀間多美子)

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カロリ野生動物保護区で、ネズミなどの侵入防止フェンスについて説明を聞く調査隊=11日、ウェリントン市

2009年08月28日 【朝刊】

ニュージーランド編(下)
自分から行動したい

 ニュージーランド北島を北に南に移動した調査隊。車窓には一面に緑の牧草地が広がり、羊や牛、馬がのんびりと草をはむ。イメージ通りの風景に、現地で環境保護に携わる内田泉さんは「かわいい、で終わらず、その背景まで考えてほしい。羊の島とも呼ばれるニュージーランドにかつて、哺乳(ほにゅう)類はいなかった」と強調する。
 ニュージーランドは地球の地殻変動で、8千万年前に大陸から切り離された。その際に一切の哺乳類が存在しなかったため、鳥の楽園として長い間栄えた。
 天敵がいないため、飛べない鳥も多かった。だが約4メートルもの長身モア、尾羽の美しいフイアなど数多くの固有の鳥たちは、人間が島に来てわずか700年で絶滅してしまった。
 最終日、国際自然保護連合(IUCN)の一員で侵入種専門家のビル・ネイグルさんを招き、環境保護のあり方を考えた。ビルさんは、沖縄でも事故や外来種が野生動物の驚異だと知り「マングースも、人間が持ち込んだ生き物。問題解決のために別の動物を持ち込めば、新たな問題を生むことになる」と指摘する。
 沖縄で駆除の対象のマングースは、原産地インドでは絶滅の危機にあるという。環境のバランスを壊してきた人間が、これから何をすればいいのか。ビルさんは「アクション。一人からでも、行動してほしい」と呼びかけた。
 沖縄クリスチャンスクール6年の香村栄実さん(11)は「まずみんなに知らせる事が、アクションだと思う。クイナの募金など、やれるところから役に立ちたい」。
 高江洲中1年の具志〓也さん(13)は「沖縄で、自分たちの周囲から行動すること。帰ったらもう一度、やんばるの森に行きたい。前と違う部分が見えるはず」と話していた。(特別報道チーム・儀間多美子)
※(注=〓はへんが「示」でつくりが「右」)

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オークランド市内の博物館で、ニュージーランドにやってきたマオリの人々の暮らしも学んだ=8月13日・オークランド