沖縄タイムス社が環境学習ツアー

与那国島のサンゴ.jpg沖縄タイムス社は今年、環境学習ツアー「沖縄こども環境調査隊~地球の声を伝えよう」を実施する。公募した児童・生徒を海外に派遣、環境問題の「現場」を体験・発信してもらうものだ。企画を機に、県内での「教育と環境」の現状や助言などを、那覇市立宇栄原小学校の横山芳春校長と、県NIE推進協議会(NIE公認アドバイザー)の兼松力・与那原中学校教諭に聞いた。聞き手は中根学論説委員会副委員長。


那覇市立宇栄原小学校校長 横山芳春さん・学校のかかわり重要

2008横山芳春.jpg那覇市立宇栄原小学校校長 横山芳春
中根学副委員長 宇栄原小学校は積極的な環境教育を実践していますね。

横山芳春氏 五年前から総合的な学習の時間の中で取り組んでいます。三年生から六年生まで、それぞれテーマを設けて、関係するNPO法人などの協力を得ながら。
 具体的には、三年生は地域での観察会を通して自然を好きになってもらおうという試みを。四年生は、ごみ問題について買い物ゲームなど中心に、また、五年生はフードマイレージや食料自給率の問題など食を通した地球環境を学んでいます。六年生は、コップにためた水での歯磨きやバケツの水でのトイレ掃除などのほか、体育の授業時には教室を消灯するなど節水、節電を実践。年間二百万円の削減に成功しています。保護者も主体的に研修を行うなど、早い段階で反応を示してくれました。

中根副委員長 NIEの視点での、環境教育の現状は。

兼松力氏 実は、新聞記事・紙面を使って発展的に深めるという実践は、人文科学分野では進んでいるものの、自然科学分野では難しく、全国的にもほとんどありません。記事が興味・関心付けの動機になることはあっても、です。実際、取り組んでいるのも、社会科と国語の教員が中心で、理科や数学の教員は少ないんです。そういう点で、新聞社が環境教育を視野にかかわるという今回のプロジェクトは、他に例を見ない実践だと思います。


NIE公認アドバイザー 兼松力さん・「継続へ種まき」期待。

2008兼松力.jpgNIE公認アドバイザー 兼松力
中根副委員長 子どもたちを海外に派遣し、環境問題を体験、発表させる企画。心掛ける点は。

兼松氏 研修というより取材に行く、という感覚で臨んでほしいですね。従来からある豆記者とは違った視点で。そのためにも、やはり事前学習が大事です。環境問題にかかわりのあるプロあるいはセミプロである団体から話を聞いたり、写真の撮り方をプロである新聞社に指導してもらうなどあっていいでしょう。

横山氏 環境問題は地球全体の問題であることを実感させてほしいし、してほしいですね。自分たちも環境に貢献できるという認識を高めてもらいたいと思います。環境教育や実践に取り組んでいる訪問国の学校と、派遣された子どもの学校とが、環境をテーマに交流できれば面白いのでは。交流することで、新たな発展があるのではないでしょうか。
 そのためにも送り出す学校全体がプロジェクトにかかわり、環境について学び、実践していく。そういった方向に向かえば、と思います。

兼松氏 子どもたちにとって、派遣は一つの社会参加。自分たちで調べたことを、学校や地域、全県に発信するという気持ちで行ってもらいたいですね。プロの記者と同じような意識を持つことで、やる気も違ってくるはずです。調べてきたものは新聞記事として書く、というのも面白いと思います。そして、プロジェクトをきっかけに、理科の先生も何らかの形でNIEに積極的にかかわっていく、そういうことを期待したいですね。

横山氏 今のご指摘は大切なポイントだと思います。中学校三年であれば自分で学習を深めていくことが可能ですが、小学生だと、海外には行ってきたものの、その後、問題意識に自分で取り組めるかといえば難しいかもしれません。そのためにも、理科の先生をはじめ学校が協力できるようにしなければいけないでしょう。

兼松氏 そういう意味で、例えばマングローブがテーマならマングローブが身近にある地域の学校というように、成果が生かせるような環境にある地域の子が行けると、学校としての取り組みにも広がりが出てくるのでは。今は関心がなくても、取り組もうというきっかけになると思うし、継続への種まきになるはずです。

横山氏 賛成です。継続・発展していくようにしなければならないでしょうね。

中根副委員長 子どもに、どう刺激を与え、学ぼうという姿勢につないでいくか。企画の柱は、まさにそこにあります。

兼松氏 経験したことを書くだけではなく、例えば、やんばるの林道の問題などの記事を読んでもらってから、こういった実態が沖縄にもあるということを認識する。その上で、海外での森林伐採の現場を見るなどすると、問題点のとらえ方が違ってくるはずです。そのことが、沖縄の未来や過去の豊かな自然などを見つめることにつながっていきます。

横山氏 子どもたちには、自分一人の力ではどうせだめだ、という悲観的な考え方を持たせたくありません。例えば、国際子ども環境サミットに派遣するなど次への目標が出てくるといい。励みになり、成長させることになるはずです。子どもたちには、あくまで大きな目標を持たせたいですね。