2009年08月13日 【朝刊】

サンゴ復活に感動
インドネシア・バリ島編(上)
広がる絶景 「沖縄でも」

 子どもたちが海外諸国で自然保護活動などを調査する学習ツアー「沖縄こども環境調査隊」(主催・沖縄タイムス社、共催・海洋博覧会記念公園管理財団)の隊員たちが8月、5カ国・地域に派遣される。第1陣として2日から1週間、インドネシアのバリ島で、サンゴをテーマに自然の役割を考えた隊員たちを紹介する。
 バリ島・クタ海岸。数年前まで開発でサンゴは失われていたが、現在は1ヘクタールにわたる大規模なサンゴの群落がよみがえっていた。地元の漁師、イワヤン・グリさん(29)は、サンゴが戻ったことで「水がきれいになり、魚が集まるようになった。生活が良くなって、みんな喜んでいる」と笑った。
 同海岸には、海洋博覧会記念公園管理財団の西平守孝参与、アクアコーラル企画代表の屋比久壮実さんが技術指導にかかわり、2007年、08年の2期にわたって30種以上のサンゴが移植された。漁師らの理解・協力を得ながらサンゴの再生は進み、現在9割以上のサンゴが順調に成長しているという。沖縄の移植技術で復活したサンゴが多くの生物を集め、再生した豊かな自然は多くの観光客を魅了している。
 北中1年の下地宮代(みやこ)さん(12)は、シュノーケルを着けてサンゴを確認し、「あざやかできれい。お花畑みたい」と感激。室川小6年の泉香菜子さん(11)も「成長が早くて、いっぱい広がっている。感動した」と笑顔を見せた。
 豊かなサンゴに触れる一方で、隊員たちからは「沖縄でももっとサンゴを増やせないか」との意見が上がった。慶留間小6年の上原由莉子さん(12)は「慶留間の海で見るサンゴは、バリとは比較にならないほど小さい」と投げ掛けた。「バリは台風がないから成長しやすいとか、環境の違いはあるだろうけれど、沖縄でも増やす方法はあると思う。『環境が違うから』と、何もしないわけにはいかない」
 沖縄では、オニヒトデやシロレイシガイダマシによる食害や病害、移植条件の整備など、サンゴを取り巻く課題は少なくない。
 屋我地中3年の新垣かれんさん(14)は「人間はなくなってから大切なものに気付くのだろうけれど、後から気付くのでは遅い。バリの人はサンゴを取り戻した。自分たちもできることを考えたい」と意欲を見せた。(社会部・嘉数よしの)

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案内役の屋比久壮実さん(左)らとともにサンゴを確認し、感激した様子の(右から)新垣かれんさん、上原由莉子さん=3日、バリ島・クタ海岸

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クタ海岸によみがえったサンゴ=3日(屋比久壮実さん撮影)

2009年08月14日 【朝刊】

バリ島編 (下)
海と陸つながり実感

 バリ島で環境に関するさまざまな視察を重ねるうち、慶留間小6年の上原由莉子さん(12)は、あることに気付いた。「環境問題ってつながっている。サンゴが生きるには下水をきれいにしないといけないし、海にごみが流れてもいけない。全部が地球規模で問題。一つ一つ直していかないといけない」
 今回の学習ツアーでは、クタ海岸で移植されたサンゴの群落を確認したほか、下水処理施設、ごみの最終処分場、マングローブ情報センターなどを回った。
 中でも隊員たちに衝撃を与えたのが、ごみの問題。バリ島には焼却施設がなく、ごみは増える一方。マングローブ情報センターでは、周辺集落から流れ込んだ大量のごみがマングローブの根元にたまり、成育、景観に悪影響を与えていた。
 隊員たちを案内したアクアコーラル企画代表の屋比久壮実さんは、「陸の環境がよくなれば、海に毒物が流れず、サンゴ、海の生き物が健やかに育つ。海は逃げられない。陸と海のつながりを理解してほしい」と、隊員たちに語り掛けた。
 環境問題を多方面から考え、自然を見つめ直した隊員たち。自分たちに何ができるかを模索し始めている。
 室川小6年の泉香菜子さん(11)、北中1年の下地宮代(みやこ)さん(12)は、家族や友達ら、まずは身近な人たちにバリ島の現状を伝えよう、と考えている。上原さんは「みんなに(環境問題を)訴えられるよう、まずは沖縄のサンゴの環境にどんな問題があるかをよく知りたい」と話す。
 屋我地中3年の新垣かれんさん(14)は「世界と沖縄をつなぐパイプ役になりたい」と決意。「現地に行けなくても、自分がパイプ役になれば伝わる。バリに来て自分の価値観が変わったように、みんなの価値観を少しずつ変えていけたら」と将来を見据えた。(社会部・嘉数よしの)

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日本のODAを基に、浸食対策が施されたタナロット寺院を視察する隊員たち。各地を巡り、陸と海がつながっていることを実感した=5日、バリ島・タナロット寺院