2009年08月20日 【朝刊】

ハワイ編(上)
ウミガメ保護を学ぶ

 沖縄こども環境調査隊(主催・沖縄タイムス社、共催・海洋博覧会記念公園管理財団)の第2陣の訪問地はハワイ。絶滅の危険性が指摘されているウミガメ保護への取り組みと、火山や天体観測などの自然体験をテーマに、県内の中学生4人が1週間の日程でオアフ島とハワイ島を訪ねた。
 初日に訪れたのは、オアフ島・ホノルル市内にある「米国西部太平洋区漁業管理評議会」。
 同評議会はマグロやカジキ漁のはえ縄に、ウミガメがかからないよう法制度の面から漁業を調整・管理している政府系の組織。調査隊はウミガメなどの保護種を担当している石崎明日香さんと、伝統文化が専門のチャーリー・カアイアイさんから話を聞いた。
 カアイアイさんがハワイに伝わるカメの昔話を紹介し、ハワイの人の心にカメが深くかかわっている状況を説明。石崎さんからは、漁にかかってしまうウミガメが法定の上限を超えると、その年の漁業は停止させられるというハワイの法制度について説明があった。
 この制度に基づき、2001年には実際にメカジキ漁が一時閉鎖されたといい、石崎さんは「この経験が漁業者のウミガメ保護への動機付けになっている」と指摘。針の形に改良を加えたり、エサを変えたりしながら、カメが針を飲み込んでしまわないようにする試みが続いているという。
 翌日はオアフ島から約300キロ離れたハワイ島に移動し、アオウミガメが餌場としている島北西部のキホロ湾を探索。海岸浅瀬の陸地で甲羅干しをしたり、水路を泳いだりする野生のアオウミガメを見た。古堅中学1年の亀島淑志さん(13)は「こんなに近くで野生のカメを初めて見た」と笑顔。北中城中2年の喜納ももこさん(12)は「野生のカメが普通に泳いでいる。すごい」とうれしそうに話した。(特別報道チーム・粟国雄一郎)

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ハワイのウミガメ保護の取り組みについて学ぶ沖縄こども環境調査隊の生徒たち=ハワイ・ホノルル市内の西部太平洋区漁業管理評議会で

2009年08月21日 【朝刊】

ハワイ編(下)
「共存」の大切さ実感

 滞在3日目、ハワイ島。調査隊は今回の主要プログラム、米海洋漁業局(NMFS)によるウミガメの生態調査に参加した。調査地は島北西部のリゾートホテル敷地内の海岸で、比較的若いアオウミガメの餌場になっているという。
 NMFSのウミガメ調査リーダー、ジョージ・バラーシさんの指導で、浅瀬にいるアオウミガメを網で1匹ずつ捕獲。頭部の大きさや甲羅の厚さなどを測って記録し、再び海に放すという作業を繰り返した。
 カメには、成長の過程や回遊経路の手掛かりがつかめる調査用の電子回路が取り付けられている。捕獲した計12匹の中には、5年間で甲羅が9センチ成長したことを確認できたカメもいた。
 NMFSが同所で年4回実施している生態調査には、現地のハワイ・プレパラトリー・アカデミー(HPA)の中学生4人と参加。ハワイで野生のカメに触れることは法律で禁止されており、生徒たちにはまたとない機会になった。
 ジョージ・バラーシさんは「調査を通じて生徒同士が親善を深めたことに意味がある。カメが生きやすい環境を考えるきっかけにしてほしい」と話した。
 石垣第二中学2年の前三盛敦貴さん(14)は「人と生物が共生できる環境について考えていきたい」と感想。北中城中学2年の喜納ももこさん(13)は「ハワイでは日本とは違う形でカメが大切にされている」と気づいた。大浜中学1年の砂川美穂さん(13)は「環境のことは、大人と一緒に子どもも考えなければいけない」と感じ、古堅中学1年の亀島淑志さん(13)は「沖縄でも生き物が自然に近寄ってくる海岸にしたい」と語った。
 調査隊に同行した日本ウミガメ協議会研究員の石原孝さんは「カメの保護について考えるときに、絶対これという答えはない。自分なりの手掛かりを見つけてほしい」と激励した。(特別報道チーム・粟国雄一郎)

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野生のウミガメの生態調査に参加する沖縄こども環境調査隊の生徒たち=ハワイ島のコハラコーストで